Editor's Pick 相場分析

【図解】景気後退のシグナル?逆イールドとは何か

こんにちは、サバイサバイFXです。

この投稿では最近ニュースで話題になっている逆イールドについて、そもそもイールドカープとはなんぞやというところから、その発生要因、経済・相場へのインパクトまで図解したいと思います。

債券の世界はこのイールドカープを始め、スティープ化やフラット化といったカタカナ用語が多く登場し、難しいと感じている人も多いと思いますので、イメージとともに理解するのがオススメです。

 

以下の流れで解説をしていきます。

 

イールドカーブとは何か?

イールドカーブとは横軸に国債の償還期限、縦軸に金利(利回り)をプロットしてできるラインの事です。(下図の黒の折れ線)

 

チャート1

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イールドカーブ関連の話題が出た時は、上の図をイメージするとニュースなどで報道されている内容がわかりやすくなります。

まず国債には償還期限の短いもの(2年など)から長いもの(20年、30年など)まで様々なものがあります。

これらを横軸に償還期限、縦軸に金利としてプロットしていくと図の黒の折れ線のようなグラフができます。

これをイールドカーブと言います。

通常は償還期限の長い国債の金利が高く、短い期限の金利が低くなっており(*)、結果としてイールドカープは右肩上がりのグラフになります。これを順イールドと呼びます。

順イールド=年限の長い国債の金利が年限の短い国債金利より高い状態ということですね。
(*年限が長いものはそれだけ資金が長期間固定化されるリスクがあるので投資家はより高いリターンを求めるため)

 

ちなみに、長い年限の国債金利と短い年限の金利差が広がっていくことを、イールドカーブのスティープ化(差が広がるので傾斜がきつくなる)、逆に縮小することをフラット化(差が縮まるので平坦になっていく)と言います。

これもよく出てくる用語なので上の図をイメージするようにするとわかりやすくなると思います。

 

 

逆イールドとは何か?

逆イールドとは順イールドの逆、つまり、年限の短い国債金利が、年限の長い国債金利より高くなる状態のことを言います。(上の図で赤のライン)

図ではわかりやすくするために、年限が長くなるにつれて下がる表現としていますが、実際には、2年国債の金利が5年国債金利を上回るなど、一部分で金利の逆転現象が起きた場合も逆イールドと呼ぶようです。

 

 

なぜ逆イールドが発生したのか

今回米国2年債の金利が10年国債の金利を上回る逆イールドが発生したことが、景気後退の前触れサインということでちょっとした騒ぎになっています。

では、そもそもなぜ逆イールドが発生したのでしょうか?

理由としてはFRBの積極的な金融引き締め姿勢が挙げられます。

ご存知の方も多いと思いますが、FRBは米国内で高まる歴史的インフレ圧力を抑えるために積極的な金融引き締め・利上げ姿勢を見せています。3月以降もFRB高官のタカ派発言が続いており、2022年中には全てのFOMC会合での利上げも予想されているほどです。

こうした背景もあって、年限の短い2年国債が大きく売られ、結果として2年国債金利は上昇(国債価格と金利は逆相関)し、10年債の金利を上回ったという因果関係が理由として挙げられます。

2年債が売られる理由は、年限の短い国債は中央銀行の政策金利の影響を受けやすく、FRBが積極的な利上げ姿勢を見せている中、価値が下がると思われているためです。

 

 

なぜ逆イールドは景気後退のシグナルと言われるのか?

逆イールドとは短期国債金利が長期国債金利を上回ることでした。国債金利が変動すると銀行の貸出金利にも影響します。

つまり短期金利が長期金利を上回ることで、企業の短期借り入れコストが長期の借り入れコストを上回ることを意味するため、企業の資金調達コストが高くつき、結果として企業は設備投資を抑制しがちになります。

また、一般消費者の借り入れコストも上昇することから、個人消費も減速。経済は次第に縮小することが懸念されることになります。

 

 

過去に逆イールドが発生した時の動き

最後に、過去に逆イールドが発生した時の相場の動きを見ていきます。

以下のチャートは、下段に米国10年国債金利と2年国債金利の差を、上段に景気のバロメーターとも言える米国株SP500の週足を表示させたものです。

逆イールドとなった場所をオレンジの丸で示しています。(青のラインが金利差ゼロ)

 

チャート2

 

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2000年のタイミングでは逆イールド発生から半年後くらいに株価は下落に転じています。この時は経済危機ではありませんが、9.11もあった時期です。

2006-07年頃には逆イールド発生から約1年後ぐらいに株価が下落局面入り。2008年のリーマンショックへとつながりました。
直近の逆イールドは2019年8月。その半年後にはコロナショックが発生し、こちらも経済危機ではないものの景気が冷え込んだのは事実です。

 

このように直近3回の逆イールド発生タイミングとその後の動きを振り返ると、概ね逆イールド発生から1年後には景気減速期が訪れていることがわかります。

4月に入って米国企業の第1四半期決算発表が始まります。インフレが高まる中で企業業績がどのようなパフォーマンスとなっているのかは、今後の行く末を左右する大きな要素となりそうです。

 


この記事はTradingViewでエディターズピックに選ばれたアイデアを記事化したものです。

参考になったという方はTradingViewで高評価(以下リンク)をしていただくと、皆さんにとってどのような記事が参考になるのか次回の執筆内容の参考となります。

 

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