こんにちは、南国タイでFXトレーディングをしながらサバイサバイな暮らしをしているサンタです。
TradingViewで投稿している相場分析(こちら)の読者の方からエリオット波動の「4波は1波の終点を超えてはいけない」について質問をいただきました。
この点は僕自身がエリオット波動を学ぶ中でもモヤモヤした点でもあり、きっと他にも疑問に思っている方はいるだろうと思ったので解説をしていきたいと思います。
理論と個人的見解の二つの観点からお話します。
いただいた質問
まずどのような質問だったかというと、
僕がある日のポンド円の相場分析を投稿した際、チャート上に5波下降の波動を描いていました(その時のチャートを下に添付します)。
その下降波動では4波終点が1波の高値を割り込んでいる状態で描かれたものだったのですが、
それに対して、
「4波終点が1波の高値を割り込んでいるのだが、推進波として捉えともよいのかどうか? ルールとしてこのような場合は推進波ではないと聞いたことがあるため、疑問に思われた。」
とのことでした。
この、「4波終点が1波の高値(安値)を割り込んではいけない」というルールはエリオット波動関連の書籍やネット上の情報には必ずと言っていいほど記載されており、ご存知の方も多いと思いますが、
この点についてエリオット波動の理論の観点と、それを解釈した僕の見解を交えながら解説したいと思います。
「4波終点が1波の高値を割り込んではいけない」は半分正解、半分間違い
結論としては割り込むケースはありです。
理論的観点と個人的見解の双方の観点からお話しします。
理論的観点
推進波には二つある
まず推進波には衝撃波(インパルス)とダイアゴナルの二つがあります。
エリオット波動に関する情報でよく出てくる4波が1波を割ってはいけないというのは、衝撃波の場合であって、ダイアゴナルの場合は当てはまりません。
また、ダイアゴナルは一つの推進波の中の5波目(エンディング・ダイアゴナル)や1波目(リーディング・ダイアゴナル)に出るということもありますし、推進波全体がダイアゴナルというケースもあります。
ダイアゴナルは衝撃波と同様に、5-3-5-3-5の副次波で推進していくケースもありますし、3-3-3-3-3の副次波で推進していくケースもあります。
この"推進波全体がダイアゴナルのケース"という点は、ラルフ・ネルソン・エリオット氏の原著「The Wave Principle 」にもチャートの例と共に記載がありますし、僕自身も過去チャートをひたすら検証する中でも度々目にしたものです。
また、衝撃波の場合であっても副次波であれば4波が1波高値(安値)を割り込むケースは普通にあります。
つまり、5-3-5-3-5波で推進する衝撃波があったとして、その波の1つが5-3-5-3-5波の副次波で構成されている場合、副次波の4波が1波に重なるケースはあるということです。
今注目している波はどのタイムフレーム(=時間軸)の波なのか、またその波の上位足の波、下位足の波(エリオット波動理論ではディグリー:階層と呼ばれる)との関連によっても異なるので、その視点を明確にすることが必要でしょう。
個人的見解
あまり気にしていない
さて、理論的なお話は上に述べたとおりですが、個人的にはぶっちゃけた話になってしまいますが、あまり気にしていないというのが正直なところです。
衝撃波であれば4波が1波と重なることはない、でも副次波では重なることもある。一方、ダイアゴナルであれば4波が1波と重なって波が推進していく。
と、まぁ色々あるわけです。
普段僕らがチャートを分析する時って、一つの時間軸のチャートだけを見るのではなく、複数の時間足を複合的に見ていきますよね?
僕が相場分析の中でよく書いているように、週足から見て、日足見て、4時間足、さらには1時間足、そしてさらにさらにそれ以下の細かい足を見ていきます。
波というのは複数の時間軸をまたがって複合的にできているので、今見ている時間足の波がプライマリー波(=その時間軸を支配する波)だと思っていても、実はさらに上位の時間軸の副次波(=上位の波に従属する波)だったというケースは多々あるわけです。
週足の上には月足がありますし、月足の上には年足だってあります。
年足の波を見ようと思ったら百年単位の過去データが必要ですが、そういった長期ヒストリカルデータを手に入れるのはなかなか困難です。
そんな状況の中、この波は衝撃波だから4波は1波に重ならないはずだなんて思うこと自体がナンセンスだと思っています。
理論として、そういうのはあるということは知っておくけれど、まぁ時間軸の絡み合いなど色々ありますよねといった感じであまり気にせず見ていくというのが僕の見解であり、エリオット波動に対するスタンスです。
この点は質問者の方も認識されている、相場に絶対はない、という考え方と相通じるものかなと思います。
以上に加え、エリオット波動理論自体、現在進行形で研究・議論されている理論(*記事末尾(注)参照)という点も留意すべき点であり、過去の観察でまとめられた理論に書かれている以外にも色々なパターンというのは存在しうるだろうと思っています。
エリオット波動理論の生みの親であるラルフ・ネルソン・エリオット氏は、もともと株式相場の指数を研究することでエリオット波動理論を編み出した方です。
株式投資というのは、基本的には値上がりを期待して買いから入る投資商品のマーケットであるのに対し、為替は2国間の通貨の両替をするマーケットです。
そこには2つの通貨間の金利差や物価差、経済力、政治情勢といった様々な要因が絡むものの、経済活動に必要な通貨のやり取りである以上、一方の通貨が青天井で上昇し続けるということはないマーケットです。(そんなことになれば経済が大打撃を受けてしまうでしょう。)
つまり基本的には月足やもっと長い時間軸での長期レンジの中で上昇・下降を繰り返す値動きです。
株に比べると値動きは早いですし(事業上の必要に迫られて売買をせざるを得ない実需筋の定期的な取引などが原因でしょうか)、そうした金融商品ごとに値動きの特徴が存在するため、個別株や為替、商品(コモディティ)、仮想通貨といった異なる金融資産ではまた一味違った波動のパターンが存在しうるのはごく自然なことだと、僕は考えています。
最近では仮想通貨(暗号資産)の値動きに対してどのようにエリオット波動を適用するかというテーマも研究対象になっているようです。(下記リンク参照)
というように、理論やルールは知っておいて損はないけれど、現在進行中で研究中の理論ということも合わせて、視点を柔軟にして見ていくというスタンスが重要かなと考えています。
注: *日本にも一般社団法人 日本エリオット波動研究所という組織が存在しますし、海外にもElliott Wave Internationalという組織が存在します。
最後にエリオット波動を勉強したいという方向けのオススメの書籍を紹介します。
上でも書きましたが、特にネット上の情報は衝撃波(インパルス)に偏った情報が多すぎます。
発信している人もインパルスしか知らない可能性もあるので、しっかり勉強したいという方はやはり書籍(一番良いのは原著)をおすすめします。
いずれもKindle版、紙の本の両方があります。
英語で読むのが苦痛ではないという方は原著に目を通すことをオススメします。
以下の書籍「RN Elliott's Masterworks」はエリオット波動理論のみならず、Nature's Law(自然の法則)やそれ以外のエリオット氏の著作を一つにまとめた集大成と言える書籍です。
マーケット以外にも視点を広げて波動の観察を試みているNature's Lawはオススメです。(書籍のほとんどは波動理論の説明の繰り返しに費やされていますが。)
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