昨日発表された8月の米CPI(消費者物価指数)はコアCPI(変動の大きい食料やエネルギーを除外した指数)が前月比0.1%の上昇と市場予想を下回ると同時に過去7ヶ月で最低の結果に。
これを受けて米株式は下落。債権が急伸し、ドルはCPI発表直後の下落から下げを埋める上昇へと荒い動きとなりました。
CPIの結果が予想を下回ったのであれば、FRBのテーパリング決定は先送りになる可能性が高まり、株高・ドル安になるんじゃないの?と思う方もいると思いますので、CPIを受けた相場の反応を解説します。
僕は毎朝NYマーケットサマリというものを配信しており、ファンダメンタルは一通り追いかけているのでメディアで報道されている内容と概ね整合しているはずですが、僕なりの解釈も踏まえた内容です(特に相場を取り巻く思惑の部分)。
米株
まず米株式はSP500、ダウ30、ナスダック総合3指数揃って下落となりました。
CPIの結果が大したことないのであれば、FRBのテーパリング懸念は後退し、株高が続くのでは?と思われる場面ですが、実際には下落です。
ここ最近は8月の弱い米雇用統計を受けてもなお、FRBの高官から早期にテーパリングを開始すべきと言った発言が相次ぎ、インフレ期待が高まっていたように思います。
そんな中で発表されたCPIの結果が大したことなかったということで、「あれ、もしかして景気減速してない?」という懸念が高まりました。米株はそもそも高値圏にありセンシティブな状態が続いていますし、加えて投資家の頭にはデルタ株の拡大による景気回復の妨げという懸念が常に頭の片隅にある状態です。
その様な状況で予想を下回るCPIが発表され、景気の減速懸念から株が下落したと見ています。
米国債
株が下がったことで急伸したのが国債です。
以下のチャートは米10年国債の1時間足ですが、米CPI発表を受けて急騰しています。
景気減速懸念からより安全資産である国債に資金が移動し上昇したものと考えられます。
株と国債は通常逆相関の関係にありますから、その通りの動きをしたということでしょう。
国債急騰により国債利回りは低下します。
ドル
CPI発表直後はドル安で反応しましたが、その後NY株式市場がオープンし、株が下がるとCPIでの下げを帳消しにする形で上昇しました。(ドルインデックス1時間足参照)
ドルインデックス1時間足
CPIが予想を下回ったことでFRBのテーパリングが先送りになるとの見方が優勢になり、ドル安になったものと思われます。
利回り低下とドル安が整合性を持って動き、ここまではセオリー通りの動きですが、株が下落したことで状況が変わりました。
パッとしないCPIの結果と株下落が合わさったことでリスクオフムードになり、ドルに逃避の買いが入ります。
同じタイミングで円も上昇しているので、NY株式市場Open後は円高・ドル高の地合いになったと言えます(スイスフランも同じく上昇)。
クロス円が軒並み下がったのも同様の理由です。
ゴールド
さて、昨日急騰したもう一つの資産がゴールドですが、これは国債利回り低下により金利のつかない金の投資妙味が向上したという通常通りの動きです。
相場がリスクオフムードになったということで、逃避の買いと合わさって金に資金が流れやすくなったものと見ています。
金は先週後半からレンジ相場となっていましたが、先日の高騰でレンジをブレイクする可能性も高まりそうです。